米国FDAが認めたエイジング(健康寿命)をターゲットにした治験ーメトフォルミン

米国FDAが認めたエイジング(健康寿命)をターゲットにした治験ーメトフォルミン

・2015年、メトフォルミンの老化に伴う疾患の発症予防を目的とした臨床試験が始まる。

・メトフォルミンは糖尿病薬として60年間使われており、安全性が確認されている。

・線虫やマウスで寿命、健康寿命を延長する効果が知られている。

・メトフォルミンの正確な作用機序は分かっていない。

[参考文献]
アンチエイジング医学 2016 Vol.12 No.3

2015年、Einstein College of Medicineのグループが、メトフォルミンの加齢に伴う症候群の予防に対する効果を調べる臨床試験を行うことを発表した。この臨床試験はTAME(Targeting Aging with Metformin)と呼ばれている。

メトフォルミンの老化に関する作用については、以前からよく知られていた。しかし、米国政府FDAが、エイジングを薬による治療の対象とする可能性を明確に認めたことは、大きなブレイクスルーだ。これまで、エイジング(老化)は誰にでも生じる生理的な現象であり、病気や疾患ではないので、治療の対象ではないという考え方が支配的であったからだ。もっとも、目標としているのは、老化に伴う症候群の発症予防(発症時期の遅延)であって、老化をスローダウンすることはあっても、老化という過程自体をなくそうとするものではない。つまり、健康寿命を延ばすことを目標としている。

実際の治験のプロトコルでは、がん、心疾患、認知障害のうち1つか2つを有する、あるいは、これらのリスクを有する70~80歳の男女3000人を対象に、5~7年かけて、メトフォルミンがこれらの病気の新たな発症を防ぐ作用があるかどうかを調べることを骨子としている。

メトフォルミンは2型糖尿病薬として60年間使われており、乳酸アシドーシスなどの副作用はあるが、安全性は十分に確認されているといっても良い。そして、線虫やマウスで寿命、健康寿命を延長し、ヒトでも心疾患、がん、認知機能低下を防ぐ効果が知られている。メトホルミンをマウスに与える実験では、普通よりも40%長生きし、骨の強度も高まった。78,000人を対象とした2014年の大規模研究では、メトホルミンを飲んでいる2型糖尿病患者は、メトホルミンを飲んでないグループよりも長生きしているという結果を示している。

メトフォルミンはそもそも欧州で中世の時代から使われている薬草が起源である。民間療法として糖尿病に使われていたガレガソウ(Galega officinalis)から、20世紀初頭にグアニジンが精製され、それから化学合成されたビグアナマイドの一種がメトフォルミンである。さらに興味深いことに、2~3年ごとにメトフォルミンの新しい作用機序が報告されるといわれるくらいで、AMPKを活性化することが主な作用機序だと考えられている点で大きな違いはないが、メトフォルミンの正確な作用機序や標的分子に関しては、60年間使われているのにもかかわらずコンセンサスは未だ得られていない。

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