糖化ストレスと人体の対応

糖化ストレスと人体の対応

・糖化ストレスが驚異となったのはわずか数十年前からだ。

・糖化ストレスを引き起こす原因には、①血糖スパイク②脂質異常症③過剰な飲酒があり、この3つに共通しているのがアルデヒドの上昇である。

・糖化ストレスに対する防御機構を生体は有するが、悪しき生活習慣によりアルデヒドの生産量が多いと対応が追いつかなくなる。

・糖化ストレス反応の結果として、血管、神経、筋、骨など身体全体に様々な影響が出る。

・糖化ストレス対策として、体育・食育・知育が必要であり、これらの生活習慣を改善する努力をした上で、機能性食品やサプリメントを用いると良い。

・糖化ストレスによる糖尿病の進展、腎機能の悪化、骨格量の減少は、さらに糖化ストレスを増加させる悪性サイクルを起こすため早期の介入が求められる。

[参考文献]
アンチエイジング医学2018 Vol.14 No.5

はじめに

人間は数十年前から酸化ストレスと戦ってきた。身体には抗酸化システムが備わっている。一方、糖化ストレスが脅威となったのはわずか数十年前である。糖化ストレスが強い疾患である肥満、糖尿病、脂質異常症は増加の一途をたどっている。

糖化ストレスとは

糖化ストレスとは、還元糖、脂質、アルコールに由来するさまざまなアルデヒドが生体内で過剰に生成される状態を表す。これらのアルデヒドは、タンパク質など生体内物質と反応してカルボニル修飾蛋白や糖化最終生成物(advanced glycation end products : AGEs)を生成し、AGEs/RAGE(Receptor for AGEs)シグナルを刺激してさまざまな変化が生じ、老化に伴う退行性変化や疾病の原因となる(1)~(3)

食品中における糖化反応と生体内における糖化反応の違いは、生体内では予想より極めて早い速度で糖化反応が進むことにある。狭義には、アルデヒド基の一般的な反応がカルボニル化であり、アマドリ変異を起こした場合がメイラード反応(狭義の糖化反応)である。実際の生体内では両者の反応は同時に進んでいる。

糖化ストレスを引き起こす原因には、①血糖スパイク②脂質異常症(中性脂肪高値、LDLコレステロール高値)③過剰な飲酒がある。この3つに共通しているのがアルデヒドである。空腹時血糖の異常はなくても、食後に150mg/dL以上の高血糖になる人は少なくない。このような食後高血糖は血糖スパイクと呼ばれ、動脈硬化の進行がはやく、身体にさまざまな障害を惹起することがわかってきた。血糖スパイクは「アルデヒドスパーク」を引き起こし、連鎖反応によって多種のアルデヒドが同時に生成される(4)。アルデヒド基(-CHO)は反応性に富むため、反応をつかさどる酵素が特に存在しなくても反応は進む。

グルコースは通常、環状構造を示すが、グルコースの一部が開環すると、直鎖構造を呈してアルデヒド基が露出し、有害なアルデヒド作用を発揮する。これが、血糖スパイクで問題となる直鎖型グルコースである。グルコースの開環率は0.002%と小さいため、通常の血糖範囲(90~140mg/dL)では、糖毒性と呼ばれる有害作用は小さく抑えられている。ちなみに、フルクトースの開環率は0.06%でグルコースの300倍もあることから、生体内での糖化反応性および毒性は強い。「血糖スパイクは、直鎖型単糖類の露出アルデヒドが、蛋白表面の糖鎖や血液・組織中に遊離した糖質と連鎖反応を起こし、多種のアルデヒドが生成する」との仮説が立てられている。

糖化ストレスに対する防御機構

カルボニル化蛋白やAGEsといった翻訳後修飾蛋白は、ライソゾーム内のプロテアーゼに難分解性を示し、プロテアソームでも分解しにくい。糖化ストレス反応の際に、蛋白を構成するアミノ酸の一部がラセミ化してD体を形成することが、難分解の原因の一つになっている(5)

生体内には、アルデヒドを分解するための酵素として、アルデヒド脱水素酵素、グリオキセラーゼ、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素(GAPDH)を備えている。グリオキセラーゼは、アルデヒドの一種であるメチルグリオキサール(MGO)を分解する有力な酵素である。MGOはアルツハイマー型認知症における糖化βアミロイド(7)や骨粗鬆症における糖化Ⅰ型コラーゲンの形成(8)(9)において重要とされる。

生体における最大の防御システムは、なんといってもGADPHである。グリセルアルデヒド(GA)が最も危険であることを細胞が熟知しているが如く、細胞質内蛋白の15~20%を占めるほどGAPDHは大量に存在し、糖代謝の過程で生じるGAをうまく処理する。GAPDHが阻害されると細胞内外のGA濃度が上昇し、細胞死に至る。

このような糖化ストレスに対する防御機構を生体は有するが、悪しき生活習慣によりアルデヒド生成量が多いと対応が追いつかず、AGEsが蓄積していくことになる。

糖化ストレスと老化関連疾患

糖化ストレスによって生成するAGEsは、細胞や組織に影響を及ぼす。細胞表面にあるスカベンジャー受容体(変性した蛋白などを取り込むゴミ処理受容体)を介してAGEsが取り込まれると、細胞内の小器官である小胞体に負荷がかかる。これは小胞体(ER)ストレスと呼ばれ、細胞の疲弊につながる。核内ではエピゲノム変化を生じる(10)。細胞表面のRAGEと呼ばれる受容体に結合すると、細胞が炎症性サイトカインを生成し、周囲の組織に炎症を引き起こす。AGEs/RAGEシグナル刺激により産生されるサイトカインとして、TNF-α, IL-1, IL-6, MCP-1がある。

糖化ストレス反応の結果として、血管、神経、筋、骨など身体全体に様々な影響が出る。

皮膚科領域では、AGEs蓄積が皮膚の黄ばみを、I型コラーゲンの糖化による架橋形成が皮膚硬化を、AGEsが色素細胞のメラニン生成を活発化してシミ形成を促すこと(11)が示されている。

これまで、糖化ストレスは糖尿病合併症の要因として位置づけられてきた。しかし、AGEsは膵ランゲルハンス島β細胞に作用してインスリンを低下、β細胞数を減少させること、糖尿病患者ではインスリンの10~20%が糖化してその機能を失いインスリン抵抗性増加を惹起することから、2型糖尿病の発症と発展に関与することが明らかになっている。また、糖尿病性腎症が進むとAGEsの腎排泄が減り、AGEsが蓄積しやすくなる。

筋肉の老化であるサルコペニアにおいても、骨格筋内にてAGEs蓄積が認められる(12)。グルコースの70%は骨格筋で消費されるために、骨格筋量が減少するとグルコース消費が減り、過剰なグルコースによりAGEsが生成されやすくなる。

以上より、糖尿病の進展、腎機能の悪化、骨格筋量の減少は、糖化ストレスを増加させる悪性サイクルを引き起こすことがわかる。糖化ストレスは早期から介入すべき問題なのである。

糖化ストレス対策

糖化ストレスには食育、体育、知育といった生活習慣が大きく影響する。糖化ストレス対策の方法は以下の通りだ。

☆糖化ストレス対策

・生活習慣の改善
①禁煙 ②過剰な飲酒を避ける ③睡眠不足の是正 ④動物性脂肪依存症からの脱脚 ⑤運動(有酸素運動、筋肉負荷トレーニング)

・食後高血糖を避ける食育
①よく噛んでゆっくり食べる ②食べる順序(野菜ファースト) ③朝食を抜かない

体育のうち、有酸素運動はグルコース消費を促し、筋肉負荷トレーニングによる骨格筋の維持は糖化ストレスに対する抵抗性を高める。

糖化反応の段階により、①原因物質(糖、脂質)の吸収を遅らせる②AGEs生成を抑制する③AGEs分解・排泄を促進する④AGEs/RAGEシグナルを抑制する、の4段階に分けられる。食育としては、原因物質の吸収を遅らせるために、よく噛んでゆっくり食べる、野菜など食物繊維を先に食べる、食前に食酢、黒酢、ヨーグルトを摂取すること、朝食を抜かないことが挙げられる。白米やパンの単独摂取は推奨できない。AGEs生成を抑制するためには、抗糖化機能成分を多く含むお茶(Camelia sinensis)やハーブ茶(カモミール、ドクダミ、ルイボス)、野菜、果実(マンゴスチン)を多く摂ることが推奨される。

知育としては、アルコール依存(過剰な飲酒)、ニコチン依存(喫煙習慣)、動物性脂肪依存(12)から脱却すること、睡眠の質を高めることが必要である。睡眠不足、不規則睡眠、睡眠の質の低下は内臓肥満を助長し、確実に糖・脂質代謝異常を増悪させる。動物性脂肪の習慣的摂取は、脳内報酬系や視床下部の神経細胞にERストレス負荷を与え、動物性脂肪への依存性が形成され、運動が嫌いになり、膵臓ランゲルハンス島β細胞の機能を低下させる(13)。動物性脂肪依性からの脱却には、玄米食やγ-オリザノールが有効である。

これらの生活習慣を改善する努力をした上で、機能性食品やサプリメントを用いると良い。AGEs生成を阻害するサプリメントとして、AGハーブMIXやサラシア、スッポン卵エキス、クエン酸、ポリフェノールなどが研究対象となっている。

おわりに

現代はまさに糖化ストレスと闘う時代である。食後高血糖という小さな事象であってもアルデヒドスパークを惹起し、血管内皮障害を契機に脳血管イベントの発症へと進行する。それに対して我々のもつ糖化ストレス防御機構は、盤石からほど遠い。したがって、早期段階から糖化ストレス対策を実践することが望ましい。

参考文献

(1)Ichihashi M, Yagi M, et al. Glycation stress and photo-aging in skin. Anti-Aging Medicine. 2011 : 8 : 23-9

(2)Nagai R, Jinno M, et al. Advanced glycation end products and their receptors as risk factors for aging. Anti-Aging Medicine. 2012 : 9 ; 108-13

(3)Fukami K, Yamagishi S, et al. Role of AGEs-RAGE system in cardiovascular disease. Curr Pharm Des. 2014 : 20 : 2395-402

(4)米井嘉一, 八木雅之, 高部稚子. [タンパク質拡散の分子修飾] 酸化ストレス. 生体の科学. 2018: 69 ; 2-3

(5)Fujii N, Takata T. The age-related increase of D-amino acids and advanced glycation end-products in protein. Glycative Stress Res. 2017 : 4 : 203-11

(7)Baric N. Interaction of methylglyoxal lysine dimer(MOLD) and hydrophobic/hydrophilic forces in the pathophysiology of Alzheimer’s disease. Glycative Stress Res. 2017 : 4 : 1-15

(8)Saito M, Marumo K. New treatment strategy against osteoporosis : Advanced glycation end products as a factor for poor bone quality. Glycative Stress Res. 2015 : 2 : 1-14.

(9)Kanazawa I, Sugimoto T. The mechanism of bone fragility in diabetes mellitis. Glycative Stress Res. 2017 : 4 : 266-74

(10)Saito Y, Saito H. Epigenetics and aging. Glycative Stress Res. 2018 : 5 : 129-34

(11)Abe Y, Takabe W, et al. Melanin synthesis induction by advanced glycation end -products(AGEs) without α-melanocyte stimulating hormone(α-MSH) or UV exposure. Glycative Stress Res. 2017 : 4 : 292-8

(12)Kusunoki H, Shinmura K. Association between glycative stress, frailty, and sarcopenia. Glycative Stress Res. 2017 : 4 ; 292-8

(13)Masuzaki H, Kozuka C, et al. Brown rice-specific γ-oryzanol based novel approach toward lifestyle-related dysfunction of brain and impaired glucose metabolism. Glycative Stress Res. 2017; 4 : 58-66


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