幹細胞治療を加速させる!炎症を抑えるタンパク質”MANF”

幹細胞治療を加速させる!炎症を抑えるタンパク質”MANF”

ポルトガルの研究者Joana Neves氏は、炎症という障害を回避して幹細胞治療の成功率を大幅に向上させる方法を発見し、2019Sartorius&Scienceの再生医療医学賞を受賞した。
免疫細胞によって産生されるMANF(中脳アストロサイト由来の神経栄養因子)というタンパク質が、加齢に伴う炎症を減らすのに重要な役割を果たし、新規セノリティック薬としての応用も取り組まれ始めている。

本記事中より

幹細胞治療成功への鍵

過去10年間の画期的な進歩により、研究者たちは、加齢が他の病気と同じくらい簡単に治療できる病気である可能性が高いというコンセンサスに収束してきています。

寿命を最大40%向上した動物実験の印象的な結果を、人間へ適応させる試みも始まっています。実験の中には疑わしいものもありますが、有望なアンチエイジング研究には、複数薬剤のカクテル療法から遺伝子治療、幹細胞治療まで様々な手段がありそうです。

その中で幹細胞は特に有望と考えられています。なぜなら、あらゆる種類の細胞になるように誘導して、損傷した組織に移植できるからです。これらの治療法は、古い組織ではうまく機能しないことがよくあり、老化治療を最も必要とする高齢者での、使用の妨げになっています。老化組織では、幹細胞の適切な統合を妨げる著しく高いレベルの炎症が起こっているためだと思われます。

現在、ポルトガルの研究者Joana Neves氏は、炎症という障害を回避して幹細胞治療の成功率を大幅に向上させる方法を発見したことにより、2019Sartorius&Scienceの再生医療医学賞を受賞しました。

ハエから人へ

組織修復はすべての生物にとって重要な仕組みであるため、背後にあるメカニズムの多くが動物間で共有されるとNeves氏は想定しました。そこで、実験でよく使用されるショウジョウバエを用いて、免疫細胞によって生産されたタンパク質に注目し始めました。

彼女は、MANF(中脳アストロサイト由来の神経栄養因子)という、あまり理解されていないタンパク質が、ショウジョウバエの炎症を減らすのに重要な役割を果たすことを発見しました。さらに重要なことに、マウスと人間も同じ因子を産生することを発見しました。MANFはすべての種で加齢とともに減少しており、加齢に伴う炎症を制限する上で重要な役割を果たすと推測されています。

Neves氏は、MANFを導入することで年老いた動物の幹細胞治療の有効性が向上するのか実験を開始しました。MANFと幹細胞を混ぜて、高齢マウスの変性した網膜光受容体と置き換え、視力の回復を大幅に促進することを発見しました。

全身への効果を求めて

さらに進んで、彼女の研究チームは次に、MANFの抗炎症効果が一般的な加齢に対してもたらす効果について調査しました。すでに発表されている研究では、古いマウスに若いマウスの血液を注入すると老化のさまざまな兆候を改善されることがすでに示されており、同様の実験を行うことで、研究チームはMANFがその結果をもたらす要因の1つであることを示しました。また、MANFをマウスに直接注射することでも同様の効果があるという実験結果がでました。

MANFのアイデアを、他の疾患の治療やヒトで使用するには時間がかかりますが、研究の分野では、セノリティックとして知られる新種の抗老化薬の開発が取り組まれています。セノリティックは老化細胞を殺す薬です。老化細胞は、年を重ねるにつれて多くなり、慢性炎症を引き起こす有害な化学物質をまき散らします。

Senolyticsは一般に、老化に伴って生じる問題の広い領域に効果がある治療とみなされており、一度に複数の状態を食い止めるのに役立ちます。一方、MANFと同様に幹細胞治療を行う上で好ましい環境を形成するためにも用いられます。

幹細胞の効率的な産生から老化の治療の調整、信頼を失わせるいんちき療法との闘いまで、MANFのような治療法をクリニックに持ち込むには多くの障壁があります。しかし、老化治療における大きな可能性を考えると、ますます勢いが増してくるでしょう。

「私たちは、酵母やワーム、ハエなどの単純な生物の健康と寿命を延ばすことができるようになりました。今後、動物、マウス、サルの寿命を伸ばすのは、それほど難しいことではないでしょう」と、Harvard Medical School老化生物学センターを率いるDavid Sinclair博士は述べます。

単一の病気を治療するのではなく、老化の原因に対して影響を与える薬を開発することで、健康と寿命にはるかに大きな影響を与えることができるのです。

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