2019年に行われた研究によると、家庭用EMSローラー美顔器によるマッサージでは、目尻とほうれい線のシワ改善効果、及び顔の角度の改善が認められた。EMSローラー美顔器で4週間マッサージすることで、シワグレード1~3のシワを有する人のシワグレードが1~2段階さがることが期待される。
もし本研究のデータが正確であれば、EMS美顔器は、「乾燥によるシワを目立たなくする」という抗シワ機能評価試験に合格した化粧品と同等の効果を有することになる。
本記事より

EMSとは
EMS(Electrical Muscle Stimulation)は、電気刺激で神経・筋肉を刺激する方法です。EMSは、特に海外で先進的な研究が行われていますが、国内でも医療やスポーツ医学の分野で応用されており、疲労回復効果や、トレーニングとの併用による筋肉量・筋出力の増加が報告されています。
なぜEMSがシワに効果があるの?
肌のシワやたるみの原因は,年齢を重ねたことによる皮膚の老化だけではありません。皮膚の下の表情筋・筋膜などの加齢による変化によってたるみも増大します。そのため、EMSにより顔の筋肉へ刺激を与えることで、皮膚のたるみがなくなり、シワが改善されると期待できます。
2019年の国内研究
2019年4月に発表された論文では、家庭用EMSローラー美顔器によりシワ・肌状態の改善効果が報告されています。
この論文は、美容機器メーカーであるヤーマン株式会社が財政支援しており、日本臨床試験協会と日本橋エムズクリニックの研究者が共著者となっています。以下に論文内容を要約します。
○用いた機器と道具
家庭用 EMS 美顔器家庭用 EMS ローラー美顔器「WAVY mini」と通電用ゲル「ボディスムージングゲル」
○研究対象
35 歳以上 59 歳以下でシワグレード 1-3,肌の乾燥やたるみを感じている女性21人

○機器使用期間と使用頻度
1 週間に 3 回(火曜・木曜・土曜),4 週間継続。1回につき10分間機器によるマッサージをおこなった。マッサージは顔面の片側のみに行い、4週間後に効果の差を比較した。美顔器は洗顔後に使用。試用期間中は、新たなスキンケアやサプリメント摂取を行っていない。

○効果を測る指標
[主要アウトカム]
目尻のシワ, ほうれい線の大きさ・深さ,肌弾力,顔のサイズ,顔の角度
[副次アウトカム]
被験者自身の肌状態の評価,安全性評価
○結果
[主要アウトカム]
- 目尻のシワ…シワグレードが 4 週後に有意に改善。
- ほうれい線のシワ…大きさ・ 深さが使用直後と 4 週後に有意に改善。
- 肌弾力…使用直後のみ軽度改善した。
- 顔のサイズ …いくつかの項目で効果があったと述べられているが、いずれも変化が0.5cm未満の顔サイズ縮小効果であった。
- 顔の角度…顎角度が-1~-2°程度、エラ角度は-3~-4°程度といずれも使用直後と 4 週後に有意に改善した。
[副次アウトカム]
- 肌状態の評価~全 12 項目中,11 項目(潤い・たるみ・キメ明るさ等) が有意に改善
- 安全性評価~4 週間の試験期間中に有害事象は発生せず,試験品の安全性が確認
○しわと肌弾力改善の程度
美容機器使用効果 | 初回使用直後の改善効果 (平均) | 4週間使用後の改善効果 (平均) |
目尻シワグレード (スコア) | 2.05→2.02 効果なし | 2.05→-0.12?と効果あり |
ほうれい線の大きさ (指数) | 45.95→36.48と効果あり | 45.95→33.56と効果あり |
ほうれい線の深さ (指数) | 0.09→0.08と少し効果あり | 0.09→0.07と少し効果あり |
肌弾力(割合) | 0.51→0.65と効果あり | 0.51→0.53と効果なし |
○結論
使用前と比較して、初回使用直後・4週間使用後でシワや肌弾力、肌の状態など多くの項目で改善がみられたと論文で結論づけられていました。
しかし、改善効果の程度も含めて消費者の立場から考えてみると、EMSを使用して期待できそうな効果は目尻のシワとほうれい線の大きさ改善効果、及び顔の角度(顎角度とエラ角度)の改善くらいでしょうか。また、肌状態の評価に関しては、①アンケートによる主観的なものであったこと②主観的にみても全項目軽度の改善に留まっていること③客観的指標である’肌弾力’で効果が認められなかったこと、の3点から効果は薄いと考えられます。
また、目尻のシワグレードに関して、4週間使用後の結果がマイナスとなっており、信頼できる結果であるのかどうか怪しいです。
もし本研究のデータが正確であれば、EMS美顔器は、「乾燥によるシワを目立たなくする」という抗シワ機能評価試験に合格した化粧品と同等の効果を有することになります。
これは、主としてシワグレード1~3のシワを有する被験者を対象とした機能評価で、シワ改善効果が有意差をもって認められたという意味です。
まとめ
家庭用EMSローラー美顔器によるマッサージでは、目尻とほうれい線のシワ改善効果、及び顔の角度の改善が認められました。EMSローラー美顔器で4週間マッサージすることで、シワグレード1~3のシワを有する人のシワグレードが1~2段階さがることが期待されます。ただし、本研究では研究対象が21人と少数であったため、さらなる試験の蓄積が求められます。
*薬用化粧品はシワグレード3~5に効果あり!
一般的に、シワ改善効果をうたう化粧品はシワグレード1~3のシワを対象としていますが、シワグレード3~5のシワに使用してシワ改善効果が認められたものは医薬部外品(薬用化粧品)として売られています。現在市場に出回っているものを3つ以下に紹介したいと思います。
・資生堂 “エリクシール リンクルクリーム”
薬用有効成分「純粋レチノール」配合。本成分配合の化粧品は、9週間の使用でシワグレード4.75→4.0の改善が研究で示されています。純粋レチノールは、表面角化細胞でヒアルロン酸の産生を促進し、表面内の水分量を高めて固くなった肌を柔軟にし、シワを改善します。
・POLA “リンクルショット メディカルセラム”
薬用有効成分「ニールワン」配合。本成分配合の化粧品は、12週間の使用でシワグレードが0.05ポイント程度改善、24週間の使用でシワグレード0.1~0.2ポイント4の改善が研究で示されています。ニールワンが、好中球エラスターゼ(真皮成分を過剰に分解する主な要因)の働きを抑え、真皮の分解と生成のバランスを整えることで、肌自らの生成力をひきだします。
・コーセー “ONE BY KOSE ザ リンクレス”
薬用有効成分「リンクルナイアシン」配合。肌を奥からグッと支える真皮と、皮膚表面にピンッとハリをあたえる表皮、肌の上下2層にアプローチします。POLA、資生堂に遅れてのシワ改善薬用化粧品発売ですが、表皮と真皮の2層アプローチに加え、独自有効成分「AZ-アスタキサンチン」配合など独自技術を結集したブランドとなっています。