あなたの「本当の年齢」は?世界中で研究が過熱する真の年齢測定

あなたの「本当の年齢」は?世界中で研究が過熱する真の年齢測定

あなたがもし30歳だとしましょう。そうだとしても、体の機能全体としては本当は何歳と表現したら良いのでしょうか。「本当の年齢」を測定することは難しく、多くの研究者・ベンチャー企業がしのぎを削っています。その先にあるのは、成功が約束された莫大なマーケットとアンチエイジング研究の急速な発展です。

生まれてから今まで生きた時間よりも、身体の機能を評価する良い尺度があるでしょうか?身体が全体としてどれだけうまく機能しているかを反映する数値、どれだけ早く老化するかを予測し、いつ医師にアラームを知らせ、アンチエイジング研究をサポートするような、年齢に代わる数字はあるでしょうか。

ヒトの「生物学的年齢」

その数字を、ヒトの「生物学的年齢」と表すことにしましょう。

科学者は、あなたの年齢(生まれてから過ごした年数)とあなたの生物学的年齢をますます区別するようになっています。

これは、単に学問的な好奇心によるものではありません。2015年に行われた研究では、約1,000人にのぼる若年成人の複数の身体システム機能を包括的に分析し、38歳の生物学的年齢は、快活な20代から弱々しい60代まで幅があることを見出しました。

さらに恐ろしいのは、参加者の誰もが明白な健康上の問題を抱えていないにもかかわらず、一部の参加者は予想よりも3倍速く老化していたことです。

「ほとんどの人は老化は人生の後半にしか起こらないと考えていますが、実際、余命を示す時計はコンスタントに時を刻んでいます」とデューク大学老化センターの研究者であるダン・ベルスキー博士は述べます。「加齢に伴う病気を予防したい場合、若いうちから対処を始める必要があります。」

ただ問題は、「若い」とは何でしょうか?人の本当の生物学的年齢はどうしたら分かるのでしょうか?この問いに答えるのは驚くほど難しいです。

老化予測の候補:テロメア

ベルスキー博士は臨床研究で、その参加者に対して数年にわたり、全身検査を繰り返し行いました。

彼のチームは、肝臓、腎臓、心臓、免疫系の機能を測定しました。さらに、代謝率やコレステロール値、有酸素運動および肺機能を追跡し、加えて記憶、論理的思考、創造性をも測定しました。テロメアの長さまでもチェックしました。テロメアは、私たちのDNAを保護し、年齢とともに削り取られて短縮する、染色体の末端にある遺伝子保護の「キャップ」です。

これらのデータを使用して、チームは人の生物学的年齢を計算し、衰弱のペースを予測する怪物のように並外れたアルゴリズムを構築することができました。

この研究は良い意味で、研究者の間に波紋を広げました。科学者はこのとき初めて、糖尿病やアルツハイマー病、またその他の加齢性疾患の最初の兆候が現れる前に、若い人々の老化の程度を定量化できるようになりました。あなたの生物学的年齢が予想より10歳年上であると想像してください。それは、運動やカロリー制限をし、自分の生活習慣を省みるよう我々に促すでしょう

それでもベルスキー博士は、この研究がまだ概念実証の段階であると強調しています。何年もかかって手に入れた幸運だった、と彼は笑います。生物学的年齢の測定が主流になるには、「より正確で、より速く、より安価な」マーカーと手法が必要です。

夢は、23andMeに送られた唾液サンプルが耳垢の種類を教えてくれるように、皮膚または血液のサンプルを採取して送ると、生物学的年齢を教えてくれるというものです。

優れたマーカーを構成する要素について、研究者の間でまだ意見が一致していませんが、最近の研究の発展によりいくつかの候補が生まれています。それらはすべて、老化と関係する分子的なプロセスに関連しています。

何十年にも及ぶ研究とノーベル賞をもとに考えると、テロメアの長さはおそらく有力候補です。

1980年代に発見されたテロメアは、染色体の末端を構成する余剰なATCGビットです。細胞が分裂するたびに、テロメアは短くなり、臨界長に達し、細胞がそれ以上分裂するのを妨げます。その後の大規模な研究により、テロメアの長さと疾患・死亡率の間に相関がみられ、生物学的年齢のマーカーとしての価値がさらに高まりました。

テロメアの落とし穴

科学者と同様に、投資家もその価値に対して注目しています。

2010年、テロメア発見者の1人であるエリザベス・ブラックバーン氏は、カリフォルニア州メンロパークで、個人の唾液サンプルからテロメア長の分析する会社を設立しました。マドリッドに拠点を置く新興企業Life Lengthは、テロメアの長さの中央値から人の生物学的年齢を計算するサービスを提供しています。

別のシリコンバレー出身ベンチャー企業であるGeronはかつて、自社のテロメア試験がもつ臨床的意義を主張していましたが、現在ではがん治療の研究に専念しています。

Geronのテロメアを元にした老化アッセイからの転身が教えてくれることがあります。テロメア計測は高速、簡単、安価ですが、1つの問題があります。それらの結果が、個々人の年齢を特に正確に反映していないということです。

同年齢の人々の間でもテロメア長のばらつきは非常に大きく、長ければ長いほど良いというわけではありません。最近の研究では、長いテロメアと発癌リスクのトレードオフが明らかになっています。

こうした警告にもかかわらず、テロメア長は依然として価値のあるマーカーであり続けています。 どのマーカーにも大きな不均質性がみられるものであり、テロメアは単にパズルの一部にすぎません。問題は、パズルを完成させるために、他にどのマーカーが役立つかということです。

老人の血液は老化を促進する

血液は体内のすべての組織に、酸素や栄養素を供給し、代わりに廃棄物を受け取ります。ある種の廃棄物レベルは年齢とともに上昇し、臓器機能の低下と関係することが長年にわたって知られています。

たとえば、スタンフォード大学で2011年に行われた研究では、高齢マウスから採取した血液を若いマウスに注入すると、脳の機能が低下することがわかりました。その後の研究によって、年寄りの血液が若いレシピエントの肝臓と心臓に対して悪影響を与えることも示されました。

「血液には豊富な情報が隠されています」と、ライデン大学(オランダ)の分子疫学者であるEline Slagboom博士は述べます。彼女のチームは、40~110歳に及ぶ3,500人を対象に、心血管の健康、認知症、糖尿病、うつ病といった加齢性疾患に関連する血液中の分子を調べる、大規模な研究を行っています。

Slagboom博士らの努力によって、すでにいくつかの老化促進因子の候補がみつかっています。

驚くべきことに、それら候補の多くは体の免疫機能に関連しており、加齢ととも過熱状態となります。一例として、alpha1-acid-glycoproteinという物質がありますが、年齢とともに増加し、死亡へつながる高リスク因子として知られています。もう1つのB2M(ベータ-2-ミクログロブリン)は、老年期に体内にあふれ、学習と記憶を障害します。

老化因子をめぐる研究競争と意義

間違いなく、老化促進(および若返り)の要因を特定するための競争は激化しています。

スタンフォード大学のWyss-Coray博士は昨年、自身のスタートアップAlkahestの資金調達で5000万ドルを獲得しました。Alkahestは、加齢とともに蓄積する老化促進因子を抑制することで脳の障害を改善したいと考えています。血液領域をベースとする治療法の開発に焦点を当てていますが、発見された老化抑制および老化促進因子の多くが、ヒトの生物学的年齢を測定するために使用できることは容易に想像できます。

最終的に、テロメア、alpha1-acid-glycoprotein、B2M、またはDNAやタンパク質の損傷など、どの指標をとっても単一でヒトの本当の年齢を正確に映し出すことはできません。複数の要因の検討と多くの試行錯誤が必要です。ただ、成功すれば一攫千金が狙えます。

ワシントン大学のLuigi Fontana氏によると、客観的な年齢関連マーカーはアンチエイジング分野の研究を、全く新しい時代に突き進ませる可能性があるといいます。短期臨床試験を使用して、ラパマイシンやメトホルミン(本サイト別記事)などの有望な老化防止薬をテストすることができ、数十年の代わりに、数か月の観察で結果が分かるのです。

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