Googleなどの大企業が取り入れて世界的な流行となったマインドフルネス。マインドフルネスの研究は盛んに行われており様々な報告がされているが、エビデンスについてはバラツキがある。そこで、本記事では、イギリス政府が運営する国民保険サービスであるNHS (National Health Service) が2017年11月に公開したマインドフルネスに関する報告についてまとめる。

体重減少と食行動に与える影響
もしあなたが体重を減らそうと努力しているけどうまくいってないなら、マインドフルネス瞑想を取り入れることを検討しても良いかもしれない。
これは、マインドフルネスが体重減少と肥満に関連する食行動に与える効果を調べた研究のレビューに基いた提案です。
マインドフルネスは古代からある瞑想の練習であり、頭に浮かんでくる思考や心配事に気を逸らされる事なく、人々が現在の瞬間をより意識するための訓練です。
研究者は、マインドフルネスが多くの潜在的な利益をもたらす可能性があると主張しました。過食を促す否定的な考えや感情を軽減したり、空腹感への抵抗力向上、食事や運動計画の遂行力を向上させる可能性があります。
全体として、研究者たちはマインドフルネス介入の減量に対する影響力を軽度~中等度とみており、平均して約7ポンド(3.18 kg)の体重減少をもたらすことがわかりました。
マインドフルネスと比べて、食事・運動による従来の減量治療を受けた対照群では初期平均体重減少が大きかったですが、フォローアップを続けると多くの人で体重が増加がみられ、全期間を通してみた効果は低下しました。追跡期間は研究間で異なっていましたが、平均して16.25週間でした。また、過食の減少など、マインドフルネスグループの食行動にいくつかの改善がありました。
しかし、この研究では、マインドフルネスの介入が減量に効果的であるという確実性を提供することはできません。調査された研究のほとんどは実験の質や方法にバラツキがある小規模なものであり、被験者がマインドフルネスと同時に何らかの減量手段を取っていたかどうかも不明でした。これにより、研究効果が本当にマインドフルネスによるものか知ることが難しくなります。
こうした不確実性にもかかわらず、マインドフルネスには体重減少以外の利点があるとも言われています。
報告の元になった研究について
この研究は、カナダのマギル大学、米国のハーバード大学、オランダのフローニンゲン大学の研究者によって実施されたもので、資金源は報告していません。医学雑誌Obesity Reviewsに掲載されています。
これは、マインドフルネストレーニングを減量または食習慣改善のための戦略として検討したシステマティックレビューおよびメタ分析です。
肥満率の上昇は世界的な問題であり、それに取り組むための効果的な介入の必要性があります。研究者たちは、肥満やそれに関連する食習慣には心理的要素が関係していると考えました。たとえば、過去の研究では、ストレスや感情に対応した過食や、満腹感に対する鈍感が肥満の原因であると示唆されています。
減量する為の心理的アプローチに関する研究は様々であり、これらの研究を集めて分析することで、よりエビデンスの高い結論を導くことが目的とされています。
調査方法と研究の質
研究者は、マインドフルネスを減量介入とした研究について文献データベースを検索しました。彼らは、母集団、介入の特徴、評価された結果など、研究の設計に関する関連情報を収集しました。
その後、研究の質を評価し、研究が本当にマインドフルネスに基づいた介入であるかどうか、参加者がランダム化されているかどうかなど、結果の信憑性に関わる側面を調べました。
調査対象にふさわしい研究として、18の出版物から合計19の研究が見つけました。これらには、マインドフルネス介入を受けた合計1,160人の参加者及び、介入を受けなかった対照群が含まれます。4つの研究は無作為化されていない試験で、残りは無作為化対照試験でした。参加者の大半(71.7%)は若い成人女性でした。
研究者は、4つの項目に対するマインドフルネストレーニングの効果を調べました。
・減量
・食行動
・心理的結果
・マインドフルネス
4ヶ月で体重が約3%減少
マインドフルネスに基づく介入後の平均体重減少は6.8lb(3kg)(初期体重の3.3%)であり、約16週間の長期追跡調査では7.5lb(3.4kg)(初期体重の3.5%)でした。
対照群の平均体重減少は、使用した介入(食事、運動、生活習慣のアドバイスなど)によって異なりました。ほとんどの対照群被験者は当初、マインドフルネスグループの人よりも体重が減っていましたが、多くの人はより長いフォローアップ期間にリバウンドがみられ、全体的な体重減少効果が低下しました。
マインドフルネストレーニングによる結果は以下のものです:
・減量に中程度の効果がある(効果量0.42、95%信頼区間[CI] 0.26~0.59。16の研究に基づく)
・肥満に関連する摂食行動の減少において、従来の治療よりも大きな効果がある(効果量0.70、95%CI 0.32から0.77、10件の研究)
・不安の軽減に中程度の効果があるが、支持するエビデンスは小さい(効果量0.44、95%CI 0.21~0.69、3つの研究)
フォーマル(毎日時間をとって瞑想する)とインフォーマル(毎日の活動中にマインドフルネステクニックを使用する)の瞑想実践を組み合わせた研究は、体重減少と食行動の改善のため行う正当な手法よりも効果的である傾向がありました。
また、減量に対するマインドフルネスの効果は長期のフォローアップを通して保たれていましたが、食習慣への影響は同様に長続きしませんでした。
マインドフルネストレーニングは、減量介入をまったく行わない場合と比較すると、優位に効果的であるようでした。
研究結果の解釈
研究者たちは、「マインドフルネスに基づいた介入が、体重を減らし、肥満関連の摂食行動を改善するのに効果的であることを示唆している」と述べています。
しかし、彼らは研究の限界を認め、「減量維持のための有効性を調べるためにはさらなる研究が必要です」と結論付け加えています。
この研究は、マインドフルネスに基づく介入が減量と肥満関連の食行動の改善に有益であることを示しました。マインドフルネストレーニングを使用して減量をサポートおよび維持する可能性を強調しています。ただし、この結論には留意すべきことがあります。
ほとんどの研究はランダム化比較試験でしたが、サンプルサイズが小さかったのです。また、これらの研究は、その方法、集団、介入の特徴、測定された結果、および全体的な質も異なっていました。これは、研究の結果を組み合わせるときに効果の正確な結論を引き出すことは非常に難しいことを意味します。
研究者は、研究の半分未満がマインドフルネスに有用な尺度を使用したと報告しました。介入の違いも問題です。特定の種類のトレーニングが最も効果的であると確信したり、結果が本当にマインドフルネストレーニングにかかったのか、それとも他の交絡因子の結果であったのかを知ることができないためです。
また、参加者がマインドフルネストレーニングに加えて他の減量または体重増加の行動をしているかどうかを知ることは困難です。これは、介入への関与と研究の結果の両方に影響を与えた可能性があります。いずれにせよ、ダイエットと運動を中心とした減量のための標準的なアプローチとの明確な比較はなかったため、マインドフルネスが最も効果的であるとは言えません。
最後に、ほとんどの参加者は女性であったため、結果は他のグループには当てはまらない可能性があります。また、同様に研究が行われた国は報告されなかったため、介入と人口特性は英国に一般化できない可能性があります。
マインドフルネスが減量に役立つとは断言できませんが、バランスの取れた食事をし、定期的に運動することで効果があることは知られています。