プテロスチルベンとは?いま注目を浴びるサプリメントを理解する

プテロスチルベンとは?いま注目を浴びるサプリメントを理解する

この有望なポリフェノールは、その分子構造と生物学的利用能から、健康および老化の研究で期待されている。しかし、プテロスチルベンは我々が知っている以上の機能を有しているかもしれない。

2003年、研究者たちは、ブドウの皮に多く含まれる天然の化学物質レスベラトロールが長寿につながる可能性があると発表し、赤ワインを飲む人たちにグラス傾ける理由を与えました。

レスベラトロールは酵母細胞の寿命を最大70パーセント延長するという研究結果が出ました。 さらに、レスベラトロールはある遺伝子の発現を促進し、糖尿病、心臓病、癌、アルツハイマー病など、幅広い年齢関連疾患を予防および治療する可能性に対する信憑性を高めました。

しかし、15年間にわたり数千もの科学的研究が行われましたが、レスベラトロールは当初の期待に応えることができませんでした。問題は、約15分で体から消失することです。つまり、科学的には、バイオアベイラビリティ(生物学的利用性)が非常に低いということです。

そこで、研究者たちは、pterostilbeneと呼ばれる新しい物質への期待を込めました。プテロスチルベンはレスベラトロールに非常によく似ていますが、小さいながら決定的な構造上の違いがあります。それは、レスベラトロールがヒドロキシ基を3つ持つのに対し、プテロスチルベンは1つしか持たないということです。ヒドロキシル基は体による代謝を促進します。ヒドロキシ基が少ないと、体が分子を除去するのが難しくなります。これは、分子が良い働きをする場合、悪いことではありません。プテロスチルベンのわずかに異なる分子構造によって、細胞膜をより容易に通過させ、レスベラトロールよりも長く体内にいることが可能になります。レスベラトロールについて知っていることのほとんどすべてがプテロスチルベンにも当てはまります。

「Resveratrolは、ポリフェノールの中で広告塔のような存在でした」とElysiumの科学研究担当ディレクターを務めるRyan Dellingerは述べています。博士の研究にはプテロスチルベンが含まれていました。これには大きな理由はありません。科学的研究のための限られたお金と時間(500以上の「有望な」ポリフェノールが研究された)で、企業と科学者は当時最も有望だった一つに化学物質に焦点を当てたからです。

プテロスチルベンの働き

プテロスチルベンはポリフェノールであり、植物、特に小さな果実やナッツに含まれる分子の一種です。ブルーベリーはプテロスチルベンが特に豊富です。ぶどうにも含まれていますが、プテロスチルベンは(レスベラトロールとは異なり)ワイン作りの過程で生き残ることができません。

ポリフェノールとは何でしょう? 「フェノール」は、特定の化学構造(この場合、ベンゼン環にヒドロキシ基が結合している構造)を指します。 「ポリ」とは、分子がある構造を複数有することを意味します。ポリフェノールの主な仕事の1つは、植物が病原体と闘う手助けをすることです。ヒトが食べると、ポリフェノールは強力な抗酸化物質として働き、細胞へのダメージを緩和します。

科学者は19世紀初頭からフェノールを認識していました。これは、消毒手術の先駆者であるJoseph Listerが1867年にフェノールの消毒特性について報告したものですが、“ポリフェノール”という単語は1894年になって初めて記述されました。

他のポリフェノールと同様に、研究者はプテロスチルベンがどのように機能するかを完全に理解しているわけではありません。プテロスチルベンの抗がん作用を研究しているバレンシア大学の生理学教授であるDr. Jose M. Estrela氏は、研究室ではがん細胞(例えば、ヒトの皮膚がん細胞)を培養することができると述べています。培養は、実験動物の血液または組織中で達成することができるプテロスチルベン濃度下で行われ、効果が全く見られませんでした。しかし、担癌マウスに静脈内投与すると、癌がある程度抑制されます。なぜそんなことが起こるのでしょうか?仮説としては、プテロスチルベンが間接的に細胞に作用するということです。プテロスチルベンは血液脳関門を通過し、グルココルチコイドとして知られているストレスホルモンの合成を支配するメカニズムを阻害します。多くの癌がグルココルチコイド受容体を豊富に持っているので、それらを遮断すると癌細胞の防御力が低下し、化学療法のような治療が効きやすくなります。

「良いことは、プテロスチルベンが機能するということです」とEstrelaは言います。 「残念なことは、私たちが持っている情報ではその潜在的な健康上の利点を十分に説明できないことです。」

プテロスチルベンとカロリー制限

カロリー制限は酵母から哺乳動物まで、あらゆるものの寿命を延ばす最良の方法として昔から知られています。少なくとも30パーセント低いカロリー摂取することは、細胞の健康を調節するタンパク質であるサーチュインを活性化することで寿命を延ばします。しかしカロリー制限は気軽にできるものではなく、科学者たちは人間がもつ7つのサーチュインを活性化するための他の方法を探しています。プテロスチルベンは、その内SIRT1と呼ばれるものを活性化し、DNA修復などで老化において極めて重要な役割を果たしています。

サーチュインは、補酵素であるNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の存在下でのみ機能し、これは加齢とともに血中濃度が低下します。NAD+の前駆体は、ニコチンアミドリボシド(NR)と呼ばれ、ミルク中に微量に含まれます。 2012年の研究で、マウスにNRを補給するとNAD+のレベルが上昇することがわかりました。これは、NRとプテロスチルベンのようなサーチュイン活性化化合物を組み合わせることで、より高い効果が得られる可能性を示唆しています。そしてElysiumの2017年の二重盲検プラセボ対照ヒト研究において、Basisというサプリメントを用いたNR補給がNAD+レベルを増加させるという結果がみられました。

プテロスチルベンサプリメントが学習能力や記憶力を改善する?!

Morris Water迷路という研究方法があります。これは、水を張った迷路の中にラットを入れ、どれだけ早く迷路から脱出できるか測定するものです。ラットは水を嫌うため、できるだけ早く出口を見つけようとします。

プテロスチルベンを投与したラットでこの研究を行ったところ、投与していない群と比べて有意に早く出口を見つけられるようになりました。以下のグラフの通り、一度目のトライアルではプテロスチルベン低用量投与群も高用量投与群も出口を見つける早さは変わりませんでしたが、二度目のトライアルでは、コントロール群に比べ低用量・高用量投与の2群とも早く迷路から脱出しました。

これは、プテロスチルベンの投与が学習と記憶力の向上に関係することを示唆しています。

健康と老化における役割

Pterostilbeneとサーチュインとの関連は、アンチエイジングを研究する科学者がこの化合物に対して興奮している理由の1つにすぎません。 2008年の研究では、プテロスチルベンが高齢ラットの認知機能を回復させるのに有効であり、作業記憶、すなわち短期記憶の改善が海馬という感情・学習・記憶に関与する脳領域のプテロスチルベン濃度と関係していることが見つかりました。また、ごく最近この化合物は強力な認知機能のモジュレーターであることが示されました。プテロスチルベンを補給した食事を与えられたマウスは、対照群よりも早く迷路から抜けることができたのです。

これは、プテロスチルベンが、認知、不安、および感情的行動の調節に関与しているPPAR-αと呼ばれる核内受容体タンパク質を活性化するためだと研究者は理論付けています。

「マウスにプテロスチルベン強化食を与えると、どういうわけかより賢くなります」とEstrela氏は言います。この場合の、「賢くなる」とは、マウスが食べ物をより早く見つけることができるということです。学習と記憶の能力も高まります。

プテロスチルベンは、細胞の抗酸化反応の主な調節因子であるNRF2と呼ばれるものを含め、人体内の防御機構に関わる複数のシグナル伝達経路を活性化することもできます。体が酸化ストレスの下にあるとき、 NRF2はストレスと闘うのに必要とされる全ての酵素を作動させます。とりわけ、酸化ストレスはDNAを損傷します。蓄積したDNA損傷は老化プロセスの一部なのです。

プテロスチルベンは、皮膚疾患に対して広範な用途を有するかもしれない。とにかく、ヒトおよび動物の皮膚癌に対する強力な保護剤となるのだ。局所的に用いてもPterostilbeneは亜鉛のような日焼け止め剤とは異なり、実際にUVAおよびUVB光線から肌を保護するわけではない。その代わり、皮膚の抗酸化能を高めることで間接的に作用をします。Estrela氏の研究室では、マウスに週2回、計6ヶ月間放射線を照射したとき、背中全体が癌で覆われていました。しかし、プテロスチルベン治療を受けた群では腫瘍がゼロでした。

プテロスチルベンは抗炎症効果もあり、科学者たちは乾癬、アトピー性皮膚炎、接触性/アレルギー性皮膚炎のマウスモデルに対する治療でも成功を収めています。

プテロスチルベンはまた、大腸ガンにおいても効果があるかもしれません。癌による第3位の死因である大腸癌は、50歳未満の人々の間で発生率が増加しています。

肝臓について、2005年のマウスの研究で、プテロスチルベン(及び、リンゴの皮やサクランボに含まれるポリフェノールである”ケルセチン”)が肝腫瘍の増殖を最大56%抑制し、寿命を延長しました。科学者たちは、なぜこのような事が起こるのか分かっていません。一つの説は、ポリフェノールが細胞分裂を妨げるというものです。ガンの状態では細胞分裂が制御できていませんが、もし何かがその細胞分裂を止めると、細胞は死にます。

そして、これから更にプテロスチルベンの良い効果が明らかになるでしょう。考えてみてください。レスベラトロールについて11000点の科学論文が発表されているのに対し、プテロスチルベンはわずか400点です。しかし、プテロスチルベンに関する研究は、レスベラトロールより少なくとも10年遅れています。まだまだ、研究は始まったばかりなのです。

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