長寿タンパクが血管と筋肉を若返らせる?!

長寿タンパクが血管と筋肉を若返らせる?!

マウスをつかった研究で、老化に関係する活性化タンパクが、加齢による血管と筋肉の変化を抑制するという結果がみられた。

サーチュインが血管と筋肉の成長を促進

年をとるにつれて我々の身体は耐久力を失っていくが、原因の一つに、血管が身体のすみずみまで酸素や栄養を送る能力が失われていくことがある。MIT(マサチューセッツ工科大学)主導の研究チームは、マウスに血管新生を促す物質を投与することで、加齢に伴う耐久力の減少が改善しうることを発見した。

研究によると、この物質はサーチュインと呼ばれる長寿に関係するタンパク質を再活性化し、血管と筋肉の成長を促進することで、高齢マウスの耐久力を最大80%増強させた。

もしこの発見がヒトに応用されたら、筋肉量の回復は骨粗鬆症や他の衰弱状態につながる加齢の影響を打ち消すことが出来るかもしれない。

「この結果がヒトに応用できるかはまだわからないが、このような薬の投与によって高齢者の筋肉量を回復することが出来るかもしれない」とMITの生物学教授であり、本研究の責任著者の一人であるLeonard Guarenteは述べている。筋肉と骨には多くのシグナル交換があり、筋肉量の減少は最終的に骨量の減少、骨粗鬆症、フレイルへつながり、老化がもたらす最大の問題となる」

本論文は2018年3月22日にCell誌に投稿された。第一著者であるAbhirup Dasは、以前までGuarentesのラボのポスドクであり、今はオーストラリアのニューサウスウェールズ大学に在籍する。他の責任著者には、ハーバード医学校教授兼ニューサウスウェールズ大学教授David Sinclairや、ペンシルベニア大学教授Zolt Aranyがいる。

時の流れに逆らう研究

1990代前半、Guarenteはサーチュインというタンパク質を発見した。これは、ほとんど全てのだ応物に存在するタンパク質群であり、酵母においてアンチエイジング効果が認められた。それ以来、他の生物に置いても同様な抗老化作用が認められている。

最新の研究では、Guarenteらは血管内皮細胞に与えるサーチュインの役割を探索していた。そこで、哺乳類でメジャーなサーチュインをコード化するSIRT1遺伝子を、マウスの血管上皮細胞から削除して観察した。すると、月齢6ヶ月で遺伝子欠損マウスでは、通常のマウスと比べ毛細血管密度が半分程度に減っていることを発見した。

次に研究者は、普通の高齢マウスにおいてサーチュインを増加させたときに何が起こるかを調べた。研究者はマウスにNMNというNADの前駆体である物質を投与し、SIRT1を活性化させた。NADは通常、動物が年をとるにつれて減少していき、これは、NAD産生の減少とNAD消費の増加が合わさって生じると考えられている。

18ヶ月のマウスが2ヶ月間NMNを投与された後、それらの毛細血管密度は若いマウスを同程度まで回復しており、持久力も56-80%改善した。この投与効果は、32ヶ月のマウス(人間では80歳代に相当)においてもみられた。

「通常の老化では、血管の数は減っていき、筋肉のような組織に栄養や酸素を届ける能力も低下していく。そうして筋肉も衰えていくのだ」とGuarenteは述べている。「NMNがNADを増加することで、通常の老化で起こる身体の衰弱を抑制することができ、SIRT1を再活性化し、血管内皮細胞の機能を回復して、より多く血管を増やすことができる。」

さらに、NMNとともに硫化水素という別のサーチュイン活性化物質を投与したとき、効果は増強した。

国立研究機関で筋肉幹細胞・遺伝子制御研究所の所長をしているVittorio Sartorelliは、この研究に関わっていないが、この実験を「エレガントで説得力がある」と評している。加えて、「NMNや硫化水素の血管新生効果を他の臓器、例えば心臓や脳などで検証することは、興味深く臨床的にも意義があることだ。これらの臓器は急性もしくは慢性的な血流障害によりダメージを受けるからだ。」と述べている。

運動の効果

研究者はまた、血管上皮細胞のSIRT1活性化は、若いマウスが運動によって良い効果を得る上で不可欠であることを発見した。マウスでは、運動は一般的に新しい血管の成長と筋肉量増加を刺激する。しかしながら、研究者が月齢10ヶ月のマウスの血管上皮細胞に存在するSIRT1遺伝子をノックアウトし、4週間のトレッドミルランニングを行わせた時、普通の同月齢マウスで見られるような血管成長と筋肉量増加がみられなかった。

人間に置き換えると、この発見はサーチュインレベルを引き上げることで、高齢者が筋肉量を増加させやすくなることを示唆している。人間における研究では、加齢に伴う筋肉減少は、ある程度運動、とくにウエイトトレーニングによって食い止めることができている。

「この論文が示唆することは、NAD前駆体投与といった介入で、高齢者の筋肉量を減少を防ぎうるかもしれないということだ。」

2014年、GuarenteはElysium Healthという会社を立ち上げ、NADの前駆体であるNRを含むサプリメントを販売している。このサプリはまた、プテロスチルベンというSIRT1活性化物質も含んでいる。

本研究はGlenn Foundation, the Sinclair Gift Fund, Edward Schulak, the National Institutes of Healthに資金提供を受けている。

参考記事はこちら
Anne Trafton | MIT News Office 
March 22, 2018

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